北米では、YZF-R1 の派生として YZF-R1S が発売されている。
YZF-R1S 2016 B601 |
この S の文字を付けたモデルとして、10年ほど前に YZF-R6S というモデルが発売されていて、YZF-R6 の廉価版の位置づけだった。
YZF-R6 2007 2C0F |
YZF-R6S 2007 4P63 |
YZF-R1S も同様に YZF-R1 の廉価版として発売されており、1500米ドルほど安い価格になっている。
YZF-R1S はどこが違うのか、写真で比較してみる。
YZF-R1 2016 2CRE USA |
YZF-R1S 2016 B601 USA |
ホイールが同一形状だったら、区別がつかないぐらいの見た目。値段の差は見えないところにあるようである。調べてみることに。
まず、コネクションロッドは、チタンから鉄になっていると書かれている。実際は、チタンじゃなくてチタン合金だと思うが。
YZF-R1 のコネクションロッド |
同様にヘッダパイプやマフラーでチタン(合金)は使われず、ホイールやオイルパン、クランクケースカバーもマグネシウム(合金)からアルミニウムに変更されている。そのために重さが 4kg 増加している。
YZF-R1M, YZF-R1, YZF-R1S の比較を表にしてみる。価格は US での価格で、スペックについて US はメトリック単位を使っていないのもあり、カナダ向けを参照した。
2016 YZF-R1M | 2016 YZF-R1 | 2016 YZF-R1S | |
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価格 | 21990 ドル | 16490 ドル | 14990 ドル |
重量 | 201kg | 199kg | 203kg |
前タイヤ | 120/70ZR17 BATTLAX RS10 |
120/70ZR17 BATTLAX RS10 |
120/70ZR17 BATTLAX S20 EVO |
後タイヤ | 200/55ZR17 BATTLAX RS10 |
190/55ZR17 BATTLAX RS10 |
190/55ZR17 BATTLAX S20 EVO |
ホイール | マグネシウム | マグネシウム | アルミニウム |
オイルパン | マグネシウム | マグネシウム | アルミニウム |
クランクケース カバー |
マグネシウム | マグネシウム | アルミニウム |
コンロッド | チタン | チタン | 鉄 |
ヘッダパイプ | チタン | チタン | ステンレス |
マフラー | チタン | チタン | ステンレス |
カウル | カーボン | プラスチック | プラスチック |
燃料タンク | アルミニウム (無塗装クリア コート) |
アルミニウム | アルミニウム |
スイングアーム | アルミニウム (無塗装クリア コート) |
アルミニウム | アルミニウム |
電子制御 サスペンション |
○ | ||
SCU | ○ | ||
CCU | ○ | オプション | オプション |
SCU はサスペンションコントロールユニット、CCU はコミュニケーションコントロールユニットのこと。YZF-R1M が重くなっているのは、リアタイヤと電子制御サスペンションに因るもののようである。
US の Cycle World の記事では、YZF-R1S と YZF-R1M との比較として、馬力や 1/4 Mile の時間などが出ている。特に街中を走る分には大きな違いがないように見える。
この YZF-R1S が何故発売されたのかと考えてみると、やはり YZF-R1 の値段が高いことにある。それに加えて、MT-10/FZ-10 の存在もあるのではと思う。
FZ-10 2016 B672 |
発売こそ YZF-R1S の方が先だが、その時点で MT-10/FZ-10 の発売を計画している筈である。エンジン等の素材変更は YZF-R1S のためだけではなく、MT-10/FZ-10 で使う前提で製造され、またホイールも MT-10/FZ-10 に流用しているように、色々なところで共通化を図っている。MT-10/FZ-10 の発売があったからこそ、YZF-R1S があったのではないか。