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YSDSについて

今日は YSDS についてを。YSDS とは YAMAHA SERVICE DATA SYSTEM の略のこと。名前の通り自動二輪車などのサービスデータが見られるシステムで、世界中で販売しているヤマハ発動機製品の1985年以降のモデルについてほぼ網羅していた。位置付けとしては輸出業者向けに、最低限の整備情報を提供してくれていた web ページで、ありがたいものだった。

YSDS

網羅していたなどと過去形で書いたのは、今年の2月で見られなくなってしまったため。このシステムは、どうもプレストコーポレーション(以下、プレスト)が運用していたようで、プレストが事業終了した影響で見られなくなってしまったようである。


このシステムの存在はだいぶ前から知っていたが、ある人からアカウントが無くても使えることを教えてもらって、それからはモデルの存在確認や、整備情報について参考にしていた。年末恒例の「〇年モデル」の一覧は、YSDS のモデル検索の結果をベースに抜けているモデルを追加して書いていたもの。YSDS が見られなくなって、貴重な情報源の1つが失われたために、この web ページを書く上で非常に痛い出来事である。

まずは、どんなデータであったか、XTZ690 BAU4 [Tenere] の日本向け昨年モデルのデータをリンクしておく。

主要諸元
整備諸元 エンジン
整備諸元 車体
整備諸元 電装
主要サービスデータ

この情報に加えて、該当モデルの配線図(ワイヤリングダイヤグラム)が付いてくることが多く、この BAU4 にも付いていた。日本語のページを掲載したが、他の言語も選ぶこともできる。

基本的に、世界各地で発売されているヤマハの自動二輪車や ATV、ボート、スノーモービルなどの情報が得られることになっていた。自動二輪車についてしか確認していないが、1985年以降に発売された日本製造のモデルはほぼ揃っていて、21世紀のモデルなら配線図もあることが多かった。怪しいのが、インド製、中国製、ブラジル製の3つで、かなりのモデルが抜けていた。最近のインド製はだいぶ抜けはなくなったけど。MBK 製や台湾製も古いモデルはだいぶ抜けていた。中国製でも、輸出しているモデルは抜けが少なかったりしていて、世界戦略として日本のヤマハが関わると情報が掲載されるのだなと予想できた。

個人的に、各国のパーツカタログを見るのも、YSDS を見るのも、ブラウザーを使わずに自分で作成したプログラムで見ている。そのプログラムでは、一度見たページは保存しているようにしているため、上記の XTZ690 BAU4 の情報が手元に残っていたりしている。無くなるとわかっていれば、もっと保存しておけば良かったと後悔していて。

YSDS が見られなくなってしまったために、この web ページの情報確認の1つが無くなってしまった。今までよりも情報確度が低くなってしまうし、書く内容も減ってしまう。危機的状況になってしまったら、この web ページの更新頻度は落ちる予定。

プレストの事業終了その後

今日は昨年6月で事業を終了した株式会社プレストコーポレーション(以下、プレスト)についてを。
プレストが事業を終了した後、口火を切った形となって、カワサキのインポーターであるブライトも事業を終了、スズキのインポーターでありモトマップの名を使っている SPK が撤退をした。

presto corp

プレストは主にヤマハの海外モデルを輸入していた会社で、形の上ではヤマハ発動機とは資本関係がない独立した会社であった。
事業終了はかなり前の段階で、取引先には伝えられていて、一昨年末の決算公告を見ても8億円近く資産があるため、破産したり事業が急に苦しくなって廃業したというわけではない。とは言え、自動二輪車を取り巻く環境から事業終了の時期と判断したのでしょう。


なぜ、このタイミングでプレストのことを書いたかと言うと、プレストの事業終了からもう9か月も経つため。未だ web ページは残っているものの、1年も経過すると消えてしまう可能性がさらに高くなる。そのプレストの web ページにはパーツカタログが掲載されており、パーツカタログが見られるだけでなく、そのパーツカタログの PDF もダウンロードできる状態である。これまでプレストが輸入してきた歴代の YZF-R1 や、TW125, XJ6, TDM850 などかなりの数の PDF である。

TW125 Parts Catalogue

今はありがたく見ることができるが、いざパーツが欲しいと思ったときに、プレストのパーツカタログが消えていると、ヨーロッパのヤマハのパーツカタログを検索する必要がある。それに、PDF があると整備するときに気になるページだけ印刷することもできるし、ネットワークがない場所でも見ることができる。何かあったときに心強い存在である。プレストのパーツカタログが見られなくなる前に、気になる人はダウンロードしておこう。

プレストは、大型自動二輪車免許が指定自動車教習所で取得できるようになった1996年に事業を開始した。1990年に VMAX が国内で正式に発売されていたため、1996年には 750cc の排気量制限は撤廃されていたものの、100馬力制限がまだ存在していた。そんな状況なので国内向け VMAX は V ブーストが取り払われて馬力も落として発売されていた。
そこでプレストが海外向けモデルを輸入し、フルパワーの車体が手に入るようになる。所謂、逆輸入モデルと呼ばれるものである。また、XJ6 や YZF-R6 など、排気量的に日本で大量に売れないようなモデルも扱っていたりした。
その馬力上限の自主制限も2007年に終わり、国内向けでも100馬力を超えるモデルが発売されるようになった。それは逆輸入をするインポーターの存在価値が半分消えてしまったことを意味していた。さらに日本国内での自動二輪車の売り上げが下がる一方の中で、撤退は不可避だったのでしょう。

ということで、少し昔を懐かしんで書いてしまった。本当はもう1つ書こうかと思っていたこともあったのだけど、それはまたの機会にして。