フランスの240ccモデル

フランスでは TDR240 や XV240 といった 240cc クラスのモデルが発売されていた。他のヨーロッパ諸国では発売されておらず、フランスだけという不思議なモデルで、他社でもフランスでは 240cc クラスが発売されていた。今日は、その 240cc クラスが何故発売されていたのかの話を。

TDR240 1988 3CL1
TDR240 3CL1

先に結論を書いてしまうと、フランスで 240cc クラスのモデルが出ていたのは、買う人が払う税額を抑えるためである。今はその税制はなくなってしまったため 240cc クラスの発売はなくなったが、昔は存在していた。


話は遡ること1953年、年号で言うところの昭和28年、フランスでは消費税に相当するものが制定された。開始は翌年1954年の4月からで、世界で初めて消費税が採用されたということになっている。このときの税率は、乗用車やカメラなど贅沢品という扱いで 33.3% となり、それ以外の製造のための製品には 20% 課す税率であった。フランスではそれ以前から GST が適用されていたが、この辺りの税制については話が長くなるので省略して。

自動二輪車については贅沢品の扱いではなかったのだけど、1957年に自動二輪車も自動車と同じ贅沢品という扱いとなる。しかし、翌年の第五共和政が始まった際に撤廃される。自動二輪車の話なのに、シャルル・ド・ゴールが登場するとは思ってもみなかった。

そして、1972年10月から排気量が 240cc を超える自動二輪車が贅沢品という扱いになり、33.3% の課税となった。排気量が 240cc 丁度だと税率は 19.6% で、241cc だと 33.3% という 13% 以上も差がつくことになる。この1972年からの税率が、240cc モデルの誕生へと繋がる。

排気量 税率
240cc 以下 19.6 %
240cc を超える 33.3 %

1972年10月からの 33.3% という税率は、その後の1988年から 28% に下がり、さらに段階的に引き下げられて、1992年には 240cc 以下と同じ 19.6% となった。240cc を境に税率が異なっていたのは、1972年から1992年までということになる。

例えば、50万円の自動二輪車を売ったとする。33.3% が適用されない 240cc だった場合は、19.6% の消費税を入れて59万円8千円となったが、241cc の場合は 33.3% の税率が加えられて66万円6千5百円となる。この差額があるために、250cc モデルをわざわざ 240cc 以下にして、TDR240 や XV240 が発売となったのである。

XV240 1989 3KF1 [Virago]
XV240 3KF1

メーカーとしては 250㏄ クラスの自動二輪車を、わざわざ 240cc 以下にして発売するかどうか悩ましいところである。別途部品を設けてセッティングも変更して、その追加でかかった金額のことを考えると、高くなる税率分より安くならないと意味がなくなってしまう。フランスで大量の購入が見込まれるならば、240cc クラスを発売するのは良い選択とはなるものの、予測の難しい選択である。

ということで、今日は前から疑問だったフランスでの 240cc モデルの話について調べた。次回は今のところまだ未定。

GQR125 CYGNUS GRYPHUS の発売

今年7月に台湾で CYGNUS GRYPHUS が発売された。モデル名は GQR125 で、年式としては2020年モデル。今日はその GQR125 [CYGNUS GRYPHUS] についてを。

GQR125 B8R3 [CYGNUS GRYPHUS]
GQR125 B8R3

CYGNUS の名前は付いているものの、GQR125 [CYGNUS GRYPHUS] のエンジンは VVA を装備した BLUECORE の水冷エンジンを搭載している。スタイリングは、表現が難しいところだけど「CYGNUS 感」は残しているものの、最近のヤマハのスクーターで採用されているデザインに寄せた感じである。


モデルコードは B8R が割り振られ、ABS モデルが B8R1, UBS モデルが B8R2, ABS モデルのモンスターエナジーカラーが B8R3 となった。ほとんど書いてしまったけど、恒例なのでモデルコード一覧を。

code name year frame remarks
B8R1 GQR125-A 2020 SEH11 ABS
B8R2 GQR125-C 2020 SEH12 UBS
B8R3 GQR125-A 2020 SEH11 ABS / MotoGP カラー

上記にも書いた通り、CYGNUS X シリーズでは空冷エンジンだったが、GQR125 [CYGNUS GRYPHUS] では水冷化された。このエンジンは、今年モデルチェンジした NMAX と同系のエンジンを採用しており、出力や燃費の向上に繋がっている。排気量が異なるが、台湾向けの GPD155 [NMAX] とエンジンを比較してみる。

GQR125 B8R1 2020 [CYGNUS GRYPHUS]
GQR125 B8R1
GPD155 B4V1 2020 [NMAX]
GPD155 B4V1

写真を見るとわかるように、タイヤサイズは違うもののホイールのデザインも GPD155 [NMAX] と同一となっている。

他に気になる装備として、オプションでドライブレコーダーを設定しており、日本円で2万5千円ほどとなっている。

GQR125 B8R

せっかくなので、台湾向け CYGNUS X と車体やエンジン周りを中心に比較してみる。

code B8R1 B2J3
model GQR125-A NXC125SA
frame SEH11 SE735
country 台湾 台湾
year 2020 2019
Photo GQR125 B8R1 NXC125 B2J3
車体寸法
全長 1935 mm 1890 mm
全幅 690 mm 690 mm
全高 1160 mm 1120 mm
シート高 785 mm 775 mm
最低地上高 125 mm 115 mm
軸間距離 1340 mm 1305 mm
最小回転半径 2.0 m 2.0 m
重量
装備重量 124 ㎏ 122 kg
タイヤ
前タイヤサイズ 120/70-12 51L 110/70-12 47L
前タイヤ銘柄 DURO DM1203F MAXXIS M6219
後タイヤサイズ 130/70-12 56L 120/70-12 51L
後タイヤ銘柄 DURO DM1203 MAXXIS M6220
ブレーキ
前ブレーキ形式 油圧式
シングルディスク
油圧式
シングルディスク
前ブレーキディスク径 245.0 mm 245.0 mm
後ブレーキ形式 油圧式
シングルディスク
油圧式
シングルディスク
後ブレーキディスク径 230.0 mm 200.0 mm
エンジン
排気量 124.7 cc 124.9 cc
ボア×ストローク 52.0×58.7 mm 52.4×57.9 mm
圧縮比 11.2 : 1 10.0 : 1
オイル量(分解時) 1.00 L 0.90 L
オイル量(交換時) 0.90 L 0.85 L
変速比
1次変速比 1.000 1.000
変速比 2.384-0.749 : 1 2.500-0.768 : 1
2次変速比 10.208 (56/16×35/12) 10.400 (39/15×44/11)

エンジン性能が上がり、それに合わせて車体も大きくしている。

この GQR125 [CYGNUS GRYPHUS] は日本で既にアトラスが輸入を始めているため、販売店でも手に入る状況である。
株式会社アトラス – CYGNUS GRYPHUS ABS
あとは、日本で正式販売されるかどうか、しばらく様子を伺いたいと思う。