XV700の年式~関税率の産物~

色々なモデルを眺めていると、何故このモデルが出たのか?という疑問に当たることがある。今日はその中でも XV700 Virago の年式についてを。

XV700 1987 1RM [Virago]
XV700 1RM

XV700 Virago は1984年から1987年まで、USA でのみ発売されていたモデル。USA 以外では XV750 Virago として以前より継続発売されていた。


4年間のみのモデルだけど、いつものように年式一覧を。

code name year country remarks
42W XV700L 1984 USA
42X XV700LC 1984 カリフォルニア
56E XV700N 1985 USA
56F XV700NC 1985 カリフォルニア
1RM XV700CS 1986 USA
1RR XV700SS 1986 USA
1RV XV700CSC 1986 カリフォルニア
1TU XV700SSC 1986 カリフォルニア
1RM XV700T 1987 USA
1RR XV700ST 1987 USA
1RV XV700TC 1987 カリフォルニア
1TU XV700STC 1987 カリフォルニア

1RR, 1TU の XV700S のモデルは、ワイヤースポークホイールを採用している。

なぜ急に XV700 が発売されて、急に消えていったのか。まず、XV700 Virago と XV750 Virago のボア、ストローク、排気量を見てみる。710cc ぐらいだったら、もう 750 扱いにしてしまおうと、XV750 にしてしまうようなことがあるので、そんなことの確認である。

name bore × stroke displacement
XV750 83.0 × 69.2 mm 748.8 cc
XV700 80.2 × 69.2 mm 699.2 cc

確実に排気量エッジに寄せられている。じゃ、どうして XV700 が発売されたのか。それは USA のセーフガード(緊急関税)のため。
1983年4月1日にレーガン大統領は ITC の意見を受け入れ、セーフガードの決定を下した。ハーレーダビッドソン社からの請願もあるが、その背後に翌年に控えていた大統領選を意識していた行動でもあった。この関税は 700cc を越える自動二輪車に適用されるもので、決定から15日後に有効になるという即時性があった。さらに最初の1年は関税率が 49.4% という高率であり、それまで 4.4 % の関税から 45 % を上乗せした形になる。その後、徐々に関税率は下げられるもので、以下の率になるというものであった。この辺りは、NEW YORK TIMES の TimesMachine 記事でも確認できる。「more than 700 cubic inches」と TYPO があるけど。

期間 税率
1983年4月15日~1984年4月14日 49.4 %
1984年4月15日~1985年4月14日 39.4 %
1985年4月15日~1986年4月14日 24.4 %
1986年4月15日~1987年4月14日 19.4 %
1987年4月15日~1988年4月14日 14.4 %

例えば、1982年に95万円で車体を製作し、USA に輸送するのに5万円かかったとする。そのときの関税は、4万4千円であった。利益無しで発売したとすると、104万4000円となる。それが、セーフガードの適用された1983年になると、149万4000円となってしまう。じゃ、XV750 は排気量を削って 700cc 以下にすれば、関税率は 4.4 % のままなので、699cc にするか、という流れになってボアダウン版の XV700 Virago の誕生となった。まさに関税率の回避のために生まれたモデルである。

XV700 と同じように XJ750 も XJ700 で、FZX750 も FZX700 で、FZ750 も FZ700 で発売されている。そんな1980年代のできごと。

RZ125のカラー

今日は RZ125 のカラーについてを。1980年代なので確認が色々と大変なのだが、1970年代のことを思うと、まだ楽と言うか。

RZ125 1982 13W
RZ125 13W

RZ125 は日本国内では RZ シリーズの最後として発売された。日本国内ではと限定したのは、RZ125 発売後に国外向け RZ500 が1984年に発売されている。RZ500 は RZV500R の海外版である。


RZ125 は1982年に発売され、1985年モデルまで毎年2色づつ発売されたので、合計8カラーが販売されていた。1985年モデルでは YPVS を装備し、フロントホイールサイズも小さくなったり、セパレートハンドルを採用したりと、かなりの変更があった。その RZ125 のカラー一覧を。

code year photo
13W 1982 CANDY BLUE
RZ125 13W A


CLEAN WHITE
RZ125 13W B
33X 1983 CHAPPY RED / WHITE
RZ125 33X 1983 A


NEW YAMAHA BLACK / WHITE
RZ125 33X 1983 B
33X 1984 CHAPPY RED / WHITE
RZ125 33X 1984 A


COOL BLUE / WHITE
RZ125 33X 1984 B
1GV 1985 WHITE / CHAPPY RED
RZ125 1GV A


WHITE / COOL BLUE
RZ125 1GV B

問題は RD125 LC である。パーツカタログが揃っていないので、どこ向けなのか判断できないのである。例えば、1985年と1986年のカラーで見てみると。

A.
RD125LC 2HK
B.
RD125LC 1985
C.
RD125LC 1985
D.
RD125LC 1986 width=

まず、A. は UK 向けと思われる。これは YPVS が装着されていないことから判断できる。ただし、リアフェンダーの形状についてパーツカタログでは異なっている。販売カタログではこの形状なので、間違いないとは思うが、他の国向けの可能性もなくはない。
UK で YPVS が外されていたのは、UK での Learner 免許の馬力上限が 12BHP だったため。Learner より上の免許をターゲットとすると、販売数が伸びないという判断だったのでしょう。制限があって YPVS を付けたところで馬力を上げられないのでただの重りになり、コストもあがるために装備されなかった。

B. と C. の違いはスイングアームが黒色塗装されているかどうかである。手元のいくつかのパーツカタログでは、黒色塗装されていないモデルがどこ向けなのか確認できなかった。web 上で見かける販売カタログでも確認できないので、C. は完全に不明である。

D. はホイールの色がゴールドになっているので、1985年のモデルではなく、1986年モデルとわかる。リアフェンダーが長いものなので、スイス向けかフィンランド向けではないかと。スウェーデン向けはさらにマッドフラップが付くようである。

という具合で、はっきりとしなかったりする。しかし、年によってカラーリングに共通性があるので、なんとなくの RD125LC のカラー一覧を。

name year photo
RD125LC 1982 CANDY BLUE
RD125LC 1982 A


CLEAN WHITE
RD125LC 1982 B
RD125LC 1984 CHAPPY RED
RD125LC 1984 A


CLEAN WHITE
RD125LC 1984 B


YAMAHA BLACK
RD125LC 1984 C
RD125LC 1985 CLEAN WHITE
RD125LC 1985 A


NEW YAMAHA BLACK
RD125LC 1985 B
RD125LC 1986 WHITE / CHAPPY RED
RD125LC 1986 A


NEW YAMAHA BLACK
RD125LC 1986 B


WHITE / FRENCH BLUE
RD125LC 1986 C

最初に書いたように、1980年代初めでこの感じなので、1970年代になるともうお手上げである。なので、RD125 のことは書けず仕舞いかもしれない。