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YW50F BW’S/ZUMAの年式

今日は4サイクルエンジンを搭載した YW50F [BW’S / ZUMA] の年式についてを。4サイクルとあえて書いたのは、2サイクルの YW50 については既に書いているため。

YW50F 2012 1VC1 [BW’S]
YW50F 1VC1

4サイクルエンジン版 YW50F は、排出ガス規制に対応するため、2012年に2サイクルエンジン版から引き継ぐ形で発売された。北米と日本で発売され、日本での 50cc クラスでの BW’S としては14年ぶりの発売となった。また、北米では2014年からバリエーションモデルとして、リアキャリアを廃し、ライトケースをフロントカウル埋め込み式にして1灯にした ZUMA X も発売された。


いつものように、年式一覧を。同じ北米でも、USA では ZUMA の名前で、カナダでは BW’S の名前で発売されていた。商標の問題なのか、言語の問題なのか、何故違っているのかは不明である。REMARKS に入れた販売名は、カタログに記載している名前を使用した。

code name year country remarks
1CD1 YW50F 2012 USA ZUMA 50F
1CD2 YW50F 2012 カナダ BW’S
1VC1 YW50F 2012 日本 BW’S
1CD3 YW50F 2013 USA ZUMA 50F
1CD4 YW50F 2013 カナダ BW’S
1CD5 YW50F 2014 USA ZUMA 50F
1CD6 YW50F 2014 カナダ BW’S
2DT1 YW50FX 2014 カナダ ZUMA X
2DT2 YW50FX 2014 USA ZUMA 50FX
1CD7 YW50F 2015 USA ZUMA 50F
1CD8 YW50F 2015 カナダ BW’S
1VC2 YW50F 2015 日本 BW’S
2DT3 YW50FX 2015 カナダ ZUMA X
2DT4 YW50FX 2015 USA ZUMA 50FX
1CD9 YW50F 2016 USA ZUMA 50F
1CDA YW50F 2016 カナダ BW’S
1VC3 YW50F 2016 日本 BW’S
2DT5 YW50FX 2016 USA ZUMA 50FX
2DT6 YW50FX 2016 カナダ ZUMA X
1CDB YW50F 2017 USA ZUMA 50F
1CDC YW50F 2017 カナダ BW’S
2DT7 YW50FX 2017 USA ZUMA 50FX
2DT8 YW50FX 2017 カナダ ZUMA X
1CDD YW50F 2018 USA ZUMA 50F
1CDE YW50F 2018 カナダ BW’S
2DT9 YW50FX 2018 USA ZUMA 50FX
2DTA YW50FX 2018 カナダ ZUMA X
1CDF YW50F 2019 USA ZUMA 50F
1CDG YW50F 2019 カナダ BW’S

エンジン周りの流用元である 50cc の JOG の生産終了により、この YW50F [BW’S / ZUMA] も生産終了となってしまった。日本国内でかなりの量が売れていれば、ホンダ製 BW’S もあったかもしれないが、JOG や Vino のように売れていたモデルではなかったため、ホンダ製で作られることもなくひっそりと発売終了となる。

車体周りを中心に、2012年の日本向け、USA 向け、さらに2011年の2サイクルエンジンの YW50 と比較する。

code 5PJ8 1CD1 1VC1
model YW50 YW50F YW50F
country USA USA 日本
year 2011 2012 2012
車体寸法
全長 1890 mm 1855 mm 1855 mm
全幅 705 mm 730 mm 730 mm
全高 1110 mm 1095 mm 1095 mm
軸間距離 1275 mm 1280 mm 1280 mm
最低地上高 120 mm 115 mm 115 mm
乾燥重量 94 kg 93 kg 92 kg
キャスター/トレール
キャスター 26.5 度 26.0 度 26.0 度
トレール 93 mm 84 mm 84 mm
タイヤ
前輪サイズ 120/90-10 120/90-10 120/90-10
後輪サイズ 130/90-10 120/90-10 120/90-10

USA 向けはキックスターターを外しているものの、重量が日本向けより重くなっている。外観を比較してみてもリフレクター以外の違いは見つけられなかったので、どこが重くなっているのか不思議である。
次回は YW50F のカラー一覧の予定。

フランスの240ccモデル

フランスでは TDR240 や XV240 といった 240cc クラスのモデルが発売されていた。他のヨーロッパ諸国では発売されておらず、フランスだけという不思議なモデルで、他社でもフランスでは 240cc クラスが発売されていた。今日は、その 240cc クラスが何故発売されていたのかの話を。

TDR240 1988 3CL1
TDR240 3CL1

先に結論を書いてしまうと、フランスで 240cc クラスのモデルが出ていたのは、買う人が払う税額を抑えるためである。今はその税制はなくなってしまったため 240cc クラスの発売はなくなったが、昔は存在していた。


話は遡ること1953年、年号で言うところの昭和28年、フランスでは消費税に相当するものが制定された。開始は翌年1954年の4月からで、世界で初めて消費税が採用されたということになっている。このときの税率は、乗用車やカメラなど贅沢品という扱いで 33.3% となり、それ以外の製造のための製品には 20% 課す税率であった。フランスではそれ以前から GST が適用されていたが、この辺りの税制については話が長くなるので省略して。

自動二輪車については贅沢品の扱いではなかったのだけど、1957年に自動二輪車も自動車と同じ贅沢品という扱いとなる。しかし、翌年の第五共和政が始まった際に撤廃される。自動二輪車の話なのに、シャルル・ド・ゴールが登場するとは思ってもみなかった。

そして、1972年10月から排気量が 240cc を超える自動二輪車が贅沢品という扱いになり、33.3% の課税となった。排気量が 240cc 丁度だと税率は 19.6% で、241cc だと 33.3% という 13% 以上も差がつくことになる。この1972年からの税率が、240cc モデルの誕生へと繋がる。

排気量 税率
240cc 以下 19.6 %
240cc を超える 33.3 %

1972年10月からの 33.3% という税率は、その後の1988年から 28% に下がり、さらに段階的に引き下げられて、1992年には 240cc 以下と同じ 19.6% となった。240cc を境に税率が異なっていたのは、1972年から1992年までということになる。

例えば、50万円の自動二輪車を売ったとする。33.3% が適用されない 240cc だった場合は、19.6% の消費税を入れて59万円8千円となったが、241cc の場合は 33.3% の税率が加えられて66万円6千5百円となる。この差額があるために、250cc モデルをわざわざ 240cc 以下にして、TDR240 や XV240 が発売となったのである。

XV240 1989 3KF1 [Virago]
XV240 3KF1

メーカーとしては 250㏄ クラスの自動二輪車を、わざわざ 240cc 以下にして発売するかどうか悩ましいところである。別途部品を設けてセッティングも変更して、その追加でかかった金額のことを考えると、高くなる税率分より安くならないと意味がなくなってしまう。フランスで大量の購入が見込まれるならば、240cc クラスを発売するのは良い選択とはなるものの、予測の難しい選択である。

ということで、今日は前から疑問だったフランスでの 240cc モデルの話について調べた。次回は今のところまだ未定。