XTZ690 Tenere 日本向けの排気量

ちょっと更新に時間が空いてしまったが、今日は日本向けの排気量についてを。
本当は XTZ690 [Tenere] の日本向け発売が延期になったことを含めて書こうと思っていた。

XTZ690 2020 BAU4 [Tenere]
XTZ690 BAU4 Tenere

その XTZ690 [Tenere] の諸元を確認していたときに、気になるとこを見つけた。今日の始まりは、そこから。


何が気になったかと言うと、排気量である。日本向け XTZ690 [Tenere] の諸元では。

XTZ690 Tenere 諸元

と排気量が 688cm3 とあるからである。他の国、例えばヤマハオーストラリアでの XTZ690 [Tenere] の紹介では、こう書かれている。

XTZ690 Tenere オーストラリアでの特徴

排気量が 689cm3 なのである。1cm3 はどこいってしまったの?と疑問に感じて。その流れでヤマハオーストラリアでのボア×ストロークも確認すると。

XTZ690 Tenere オーストラリアでの諸元

日本向けはストロークが 68.5mm なのに、オーストラリアを含めた他の国では 68.6mm となっている。数値上では日本向けはストロークダウンしていて、この影響で排気量が 1cm3 少なくなっているようである。
これは実際にストロークが短いのか、それとも単なる実測値の端数処理の違いなのか。クランクが違っているかの確認をしようと思ったが、XTZ690 [Tenere] の日本向けパーツカタログがまだ出ていないので、確認がとれない。そこで、同じ系統のエンジンを搭載している MTN690 [MT-07] だとどうなっているのか見てみた。

MTN690 MT-07 諸元

XTZ690 と同じく 688cm3 となっている。そして、XTZ690 と同様に、日本以外の国では 689cm3 である。そこで、日本向けとヨーロッパ向け MTN690 [MT-07] のクランク、さらに念のためシリンダーとピストンの部品を比較してみた。結果、全てパーツ番号が同じであった。

ということで、一旦今日の結論を。

日本向け XTZ690 や MTN690 では排気量やストローク長が他の国向けより小さい値で表記されているが、実際は同じ

→端数処理や表記上のルールが違うため、異なっている

この端数処理や表記での違いについて、ISO 80000-1 や JIS Z 8401 や JIS B 8003 などを眺めてみたが、よくわからなかった。
そこで、日本の車検証に記載される排気量について調べてみる。例えば、車検証では排気量はリットルで表記され、小数3位目は切り捨てされた数値となるため、398cm3 でも 0.39ℓと記載される。この理由を調べてみると、独立行政法人自動車技術総合機構の資料が見つかった。

独立行政法人 自動車技術総合機構 審査事務規程 第5章 自動車の検査等に係る審査結果の通知方法

この資料の「5-3-13 総排気量又は定格出力」に以下の記載がある。

総排気量は、単位をℓとし、小数第2位(小数第3位切り捨て)まで通知するものとする。
ただし、二輪自動車及び側車付二輪自動車でその総排気量が0.251ℓから0.259ℓまでのもの及び二輪自動車及び側車付二輪自動車以外の自動車で総排気量が0.661ℓから0.669ℓまでのものにあっては、それぞれ0.26ℓ及び0.67ℓとする。

小数第3位で切り捨てしているが、車両の区分が変わる排気量帯では例外がある。知らなかった。上記の記載の続きで、総排気量の算出についても記載されている。

この場合において、総排気量を算出する必要があるときは、円周率を3.14とし、内径及び行程については、単位をmmとし、小数第1位(小数第2位切り捨て)までの値とする。

この記述にあるように、行程(ストローク)を小数第2位で切り捨てしたため他国よりも小さくなり、加えて円周率として3.14と省略値を使ったために排気量も小さくなった、と今のところ推論しておくことに。

AG100の年式

先週少し触れた AG100 について、今のところ確認できている最終年式が2016年となっている。ほぼ5年製造をしていないことになるのと、後継の AG125 が2017年から発売されていることを考えると、これは製造終了したとみてよいでしょうと判断した。

AG100 2016 B4A1
AG100 B4A1

このクランクケースの形状に懐かしさを感じる人はかなりの年齢の人で、ともすればヘルメット着用義務が無い時代を語れる人ではないかと。そんな AG100 は1973年から発売されていたモデルで、途中継続販売という形で年式は途切れて見えるものの、44年という長い間発売されていた。SR400 が今年で販売終了と仮定すると、SR400 の発売期間は43年なので、それよりも長いことになる。


1970年代が含まれるため、かなり不明な部分があるが、AG100 の年式一覧を。

code name year country remarks
382 AG100 1973 不明
497 AG100 1975 不明
3V6 AG100G 1980 ニュージーランド
3V6 AG100J 1982 オセアニア
13A AG100 1982 英国
3V6 AG100U 1988 ニュージーランド、その他
3HA1 AG100U 1988 豪州
3HA2 AG100W 1989 豪州、その他
3HA3 AG100A 1990 豪州
3HA4 AG100B 1991 オセアニア、その他
3HA5 AG100D 1992 オセアニア、その他
3HA6 AG100E 1993 オセアニア、その他
3HA7 AG100F 1994 オセアニア、その他
3HA8 AG100G 1995 オセアニア、その他
3HA9 AG100H 1996 オセアニア、その他
3HAA AG100J 1997 豪州、その他
3HAB AG100K 1998 豪州、その他
3HAC AG100L 1999 豪州、その他
5HS1 AG100 1999 ガーナ
3HAD AG100 2002 ペルー
3HAE AG100 2003 ペルー
5HS2 AG100F 2003 ガーナ
3HAF AG100F 2004 ペルー
3HAG AG100 2005 ペルー
3HAH AG100F 2006 ペルー
3HAJ AG100F 2007 ペルー
3HAK AG100F 2008 ペルー
3HAL AG100F 2009 ペルー
3HAM AG100F 2010 ペルー
3HAN AG100F 2010 豪州
3HAP AG100F 2011 ペルー
3HAR AG100F 2011 豪州
3HAS AG100F 2012 豪州
3HAT AG100F 2012 ペルー
3HAU AG100F 2013 ペルー
3HAV AG100F 2013 豪州
3HAW AG100F 2014 豪州
3HAX AG100F 2014 ペルー
3HAY AG100F 2015 豪州
B4A1 AG100F 2016 豪州

個人的にパーツカタログの確認ができているのは 3V6 からで、このとき既に CDI 化されている。オーストラリアでは、モデル名の最後に年式のアルファベットが付くことになっているのだが、復活した2010年以降については AG100F となっている。これは、公道を走れないモデルとして発売された影響で、あくまでも牧場や農場内でのみ使う用途限定である。

「その他」の国がどこの国なのかは、3HA9 以降のパーツカタログで確認することができる。3HA9 の場合は以下のようになっていた。

production code country
010 オーストラリア
020 西カメルーン
ギアナ
ルワンダ
030 ガーナ
ガンビア
040 リベリア
シエラレオネ
050 ペルー
パラグアイ
エルサルバドル

アフリカや南アメリカの国となっている。

次回は AG100 のカラーとしたいところだけど、1970年代があるのに加えて、古いオーストラリア向けの写真も揃わないため、カラーは無しで。