日本向けパーツカタログが変更に

今日は日本向けパーツカタログについてを。連休明けで、少々疲れているが。

B3K1 Parts Catalogue

先日、ホンダ製の JOG を書いたとき、パーツカタログの件をちょっと取り上げたのだけど、どうやらホンダ製だからという訳ではなく、Jog だからという訳でもなく、変更されたようである。具体的には中身ではなく、「まえがき」以降の部分で、MT-07(B4C6)、 BOLT(BP6D)、BOLT R-spec(BS5E) でも同じように変更になっているため、2018年4月以降に発行になったパーツカタログ全てで変更になっているようである。web 版パーツカタログには出てこない部分なので、手元にパーツカタログがないとさっぱりの話なのだけど。


これまでのパーツカタログで、2003年4月以降に発行されたものだと、「まえがき」はこのような順番になっていた。

1 部品を御注文の際は、本パーツカタログを御参照の上、部品番号、部品名、数量を正確に御指示下さい。
2 部品の新設、あるいは変更が生じた場合は、パーツニュースにてお知らせいたします。(以下略)
3 アセンブリでの販売部品は、その構成する部品名の頭に(・)印をつけて一文字下げた状態にて表わしてあります。
4 アセンブリでの販売部品使用個数は、アセンブリ単体に含まれる使用個数を表示してあります。
5 本文中に記載されています省略記号は次の様になっています。
6 本カタログ上のイラスト(絵)は、部品を探し出す為のものですので、実写とは、形状、取り付け位置が異なる場合があります。
7 製品のカラー種類によって使い分けが必要な部分は、次の様に表示されています。
8 打刻仕様
9 カラーコード一覧
10 製品情報
11 サービス資料・部品番号
標準整備時間について
モデルラベル

この中で「モデルラベル」は、「まえがき」外の扱い。1~7 まではどのモデルでも同じ文章とイラストが使われていた。つまり、どのパーツカタログでも共通。8の「打刻仕様」以降は7までとページが分かれていたが、「打刻仕様」のように急に文ではなく単語になっていて、統一されていない感じがしていた。

2018年4月以降の新しくなったパーツカタログでは、以下のような順番で書かれている。

パーツカタログご使用の前に
目次
本書の使い方
部位イラストの見かた
部品番号一覧表の見かた
パーツカタログ内の略語
部品番号の構造
本書の対象機種の製品情報
 1. 製品情報
 2. 車体番号
 3. エンジン番号
 4. モデルラベル
 5. 本体のカラータイプ情報
 6. 本体に仕様されている各色部品のカラーコード一覧
 7. サービス資料の部品番号
標準整備時間

「使い方」と「見かた」で漢字の扱いが変わって少し違和感があるが、かなりわかりやすくなった。

基本的にページ番号を除いて、「パーツカタログご使用の前に」~「部品番号の構造」までがどのモデルでも使われる共通のページ。基本的にと書いたのは、早速間違いが修正されているため。Jog(CEH50 B3K1)、Jog Deluxe(CEH50D B3K2)、BOLT(XVS950CU-A BP6D)、BOLT(XVS950CUD-A BS5E) のパーツカタログでは FORWARD に typo があり、FOREWARD となっている。これは MT-07(MT-07A B4C6) のパーツカタログで修正されている。

BOLT(XVS950CUD-A BS5E) のパーツカタログ
BOLT(XVS950CUD-A BS5E) のパーツカタログ

その MT-07(MT-07A B4C6) のパーツカタログでは、車体番号のイラストとエンジン番号のイラストが入れ替わっている間違いがある。

MT-07(MT-07A B4C6) のパーツカタログ
MT-07(MT-07A B4C6) のパーツカタログ

細かいところでは、Jog(CEH50 B3K1)、Jog Deluxe(CEH50D B3K2) のパーツカタログで、イラスト記号の間違いがある。モデルラベルの位置を示すイラストなので、本来ならこのイラスト番号は IDB で始まるものではなく MDL で始まるべきもの。

Jog(CEH50 B3K1) のパーツカタログ
Jog(CEH50 B3K1) のパーツカタログ

多少の混乱は見られるものの、これから発行されるパーツカタログはしばらくこの形式になる。

「部品番号一覧表の見かた」などのページはページ数が増えるし不要な感じもするが、販売店の要望があったのか、個人からの問い合わせがあったのか、何かしら理由があるのでしょう。見りゃわかるでしょ、と言える時代でもなくなった背景もあるし。

欧州のA2ライセンス向けモデル

FZ6-SHG 2009 4S8B [Fazer spec2]
FZ6-SHG 4S8B

事の発端は。先日まで FZ6 のことを書いていたが、ヤマハ発動機のニュースに掲載されていた9つのバリエーションが発売されるという2006年10月の記事である。
「FZ6 Fazer spec2」『インターモト2006』で発表


何が気になったかと言うと、それまで FZ6 / FZ6 Fazer として発売されていたモデルに spec2 が付いた FZ6 spec2 / FZ6 Fazer spec2 が追加された。そこまでは特にひっかかることはなく。
しかし、FZ6 / FZ6 Fazer の馬力は 72kW あったのに、spec2 が発売されると、FZ6 / FZ6 Fazer の馬力が 57kW に下げられているのである。これはどうしたものなのか。

ヤマハ「FZ6 Fazer spec2」『インターモト2006』で発表

FZ6 / FZ6 Fazer 発売時点で馬力は 72kW である。これは同様にヤマハ発動機のニュースで確認できる。
「FZ6-S “Fazer”」「FZ6-N “FZ6″」について
なぜ馬力を下げる必要があったのか。今日はそこを調べてみる。

ちょっと話を変えて、他社の自動二輪車のことを。ここで他社の自動二輪車のことを取り上げるのはないと思っていたが、良い例がなかったので。川崎重工は、ヨーロッパでも Z900 を発売している。

KAWASAKI 2018 Z900
KAWASAKI 2018 Z900

先日まで、Z900 はヨーロッパでフルパワーモデルと 70kW モデルの2種類を発売していた。そして、1週間前に 35kW モデルが追加となる。
Z900 フルパワーモデル
Z900 70kWモデル
フルパワーモデルでは、92.2kW なのだけど、それ以外に 70kW のモデルを発売する意味がわからない。なぜ意味がわからないかと言うと、EU での A2 ライセンスでは 35kW の馬力制限なので、70kW モデルは何のためのモデル?となってしまうからである。ここで、A2 ライセンスモデルのレギュレーションを確認してみる。

現在、EU での運転免許については 2006/126/EEC で規定されており、2013年1月から施行されている。2006/126/EEC では、A2 カテゴリを以下のように規定している。

motorcycles of a power not exceeding 35 kW and with a power/weight ratio not exceeding 0,2 kW/kg and not derived from a vehicle of more than double its power,

最後のところに書かれている、not derived from a vehicle of more than double its power が 70kW の根拠である。つまり、由来となるモデルが倍以上の馬力を持っては駄目ということになっている。Z900 で説明すると、先日発売された Z900 35kW モデルの由来である Z900 が 92.2kW だと、この規定に違反する。そのために、Z900 70kW モデルを出して、そのモデル由来の 35kW ということだと、クリアされる。ざっくり言うと、A2 ライセンス向け 35kW の決まりのため、わざわざ誰も買わないと思われる 70kW をラインナップに入れる必要があった、ということである。

話を FZ6 / FZ6 Fazer の 57kW モデルに戻す。この 57kW に意味があるのか調べてみると、FZ6 の後継でもある XJ6 シリーズのヨーロッパ向けでも 57kW の馬力であった。そして、XJ6 では A2 ライセンス向けも発売されていた。他社でも GSF600 や CBF600 など、この辺りのクラスでは 57kW の馬力で、同じモデルの A2 ライセンス向けを発売していた。そうすると、57kW というのは A2 ライセンス向け 25kW 制限と何か関係がありそうである。

EU で2013年に始まった運転免許の規定 2006/126/EEC より以前を確認すると、91/439/EEC の規定が1996年から2013年まで用いられていた。しかし、91/439/EEC の規定では A2 ライセンスの記述はなく、A ライセンスの規定で18歳までは 25kW の制限があると書かれているだけである。そうなると、2013年までは EU として A2 ライセンスはなかったということになる。

ヨーロッパヤマハの web ページを見ると、2013年以前でも A2 向け表記が見つかるが、何を指しているのか。これは、EU としての規定ではなく ヨーロッパのそれぞれの国で規定されている A2 を指していることになる。そうなると、57kW の根拠がどこの国に書かれているのか、調べるのが大変になってくる。ざっと調べてみたが、当時の法令について、見つけることができなかった。見つけられなかったのは、英語以外の言語でも確認する必要があるので、それができなかったことが大きい。A2 ライセンスがあったということ自体は、複数の国で確認している。

予想で書くとする。FZ6 / FZ6 Fazer が 57kW に馬力を下げたのは、ヨーロッパのどこかの国で規定されている A2 ライセンスの規定によるもので、25kW モデルを出すには、元となるモデルが 57kW 以下でないと違反するため、ではないかと。
もう少しきっちり詰めて結論を書きたかったけど、調査不足からこんな結論になってしまった。